社長  閔 南淑のブログ ・ 温エネルギー記

2015.12.21

第31回 京都賞授賞式 及び 記念講演会参加

国立京都国際会館

11/10、11日

『 京都賞の理念である。 人のため、世のために役立つことをなすことが、人間として最高の行為である 』

稲盛和夫理事長の人生観を具現化し、自分を育ててくれた人類社会にお返しをしたいと考え、更には、科学技術の進歩だけではなく、人類の精神的深化の双方がバランスよく発展してこそ、人類社会の未来永劫の安定が果たせるという確信から、その実現を願って当賞が設立。

私は、この理念に共鳴し、2009年から7年目も出席し、今世紀の最先端の技術、地球・宇宙科学、思想・芸術部門の進歩に触れ、大いなる世界の啓発で自己成長はもちろん、社員達も成長へ導くエネルギーを頂くことになった。

第31回 授賞式では、稲盛財団名誉総裁でいらっしゃる高円宮妃 久子殿下のご出席と各国の大使、総領事の皆様を始め、各界の方々のご臨席のもと、特異な雰囲気を味合うのも、キムチ達のおかげであると感謝の念であった。

それは、キムチ達の生態に心を寄せ、その発酵の過程を知りたいと、自然科学に目を向け、さまざまな世界と出会うことになった。特にゲーテの文学全集を通して、あらゆる世界に触れ、キムチ達を理解しようと努めて、この日があることを大いに喜び味合った。

今年の受賞は、私が大好きな分野が3つともであり、その感無量の思いは今生の最高のものとなった。難解ではあるが、下記の通りにまとめ、理解を深めることとなった。

先端技術部門 材料科学 受賞者 国武 豊喜 博士 科学者

合成二分子膜の発見による分子組織化学の創出と、材料科学分野の先駆的貢献が受賞理由であった。

国武豊喜博士は、人工分子から生体膜の基本構造である二分子膜が自己組織的に形成されることを、今から38年前、1977年、世界で初めて報告なさったと。

この研究報告は、『 生体膜のような分子レベルの秩序組織構造は、生態脂質によってのみ形成される 』 とする考えを覆す業績であり、自己組織化によって、階層的に生み出される分子組織構造並びに、その物性と構成分子の構造の相関を、分子デザインに基づいて理解することを初めて可能にしたと。

分子の自己組織化を水中のみならず、有機媒体中にも拡張したことにより、それまでの両親媒性の概念を、より一般的な上位概念である 『 親媒性/疎媒性 』 に書き換えた。また、二分子膜中において、高度な秩序構造に由来する特異な官能基間相互作用が発現することを明らかにし、それらを分子レベルで制御する分子組織化学の基本概念を確立。種々の二分子膜の固定法を開発し、精密組織膜を実現。医療・臨床検体検査の電極に応用されていると。

又、有機分子組織体を鋳型とする、二次元高分子、二次元シリカ超薄膜の合成を初めて実現。近年では、極限的な薄さ約15mmを、十分な強度と柔軟性を兼ね備えた自立性巨大ナノ薄膜の作製手法を開発し、燃料電池の開発を初め、広汎な分野への応用が期待されていると。

これらは、私達の細胞生成の初段階での営みで、神秘に包まれた形態を科学的根拠で明らかにして、自分自身やあらゆる生物・植物の生態を理解する醍醐味を与えて頂く内容で、想起する度事、胸の中がワクワクするのを覚えた。又、そのような細密な物事にお世話になっていることにも気付いた。

基礎科学部門 受賞者  ミシェル・マイヨール博士 スイス 宇宙物理学者

太陽系外惑星の発見による新たな宇宙像の展開への多大な貢献が受賞理由であった。

それは、長年人類が探究してきた 『 我々の太陽系以外に惑星は存在するのか 』 という根源的な問いに関して・・・

もう既に、今から2300年以上も前に、古代ギリシャ哲学者 エピクロスは、宇宙は無限で、原子の数も、世界の数も無限であると示し、それらの世界に生命が存在する可能性を示唆してあったものを、ミシェル・マイヨール博士によって太陽系外の惑星の発見で証明される運びに至ったことを知った。

わずか、20年前の1995年、天文学の進歩によって、ペガスス座51番星の周りを公転している惑星51  Pegasi  bを発見。それは木星程の質量でありながら、わずか4,2日で公転しているという。これは、太陽系の姿や惑星形成理論からは全く予想できない驚くべきものであったと。

・・・近い将来、地球に良く似た 『 第2の地球 』 の発見や、水が液体で存在するなど生命の発生の可能性があるハビダブルな惑星の確認、更には、大気観測による生命兆候の確認など新たなる科学的チャレンジが続くと考えられていると。

そして現在は、2000個ほどの惑星が発見され、太陽界の惑星と異なる多様性が明らかになってきていることを知り、私達の生命の根源の多様性に触れるような、この度の京都賞受賞式の参加は格別なものとなって、命を育む法則性の多様性を感じ大喜びを味合った。

思想芸術部門 受賞者  ジョン・ノイマイヤー氏  振付家 ハンブルク・バレエ団 総裁 芸術監督

20世紀バレエの流れを刷新し、今世紀もなお世界の舞踊界を牽引し続けることが受賞理由であった。

ジョン・ノイマイヤー氏は、伝統的なバレエの動きをベースに、身体の持つ表現力を最大限に引き出し、それによって人間心理を深く探究してきた振付家であると。

それは、20世紀以降のバレエは、19世紀のロマン主義的な妖精譚とは一線を画すリアルな人間造形を中心に据えた 『 身体の演劇 』 と、楽曲に緊密に対応した 『 観る音楽 』 の2つに分かれて発展してきたが、『 身体の動きによる精神の表出 』 という舞踊ならではの営みに対して極めて自覚的なノイマイヤー氏は、長年に渡る活動の過程で次第に両者の本質を統合し、バレエという芸術全体を一段の高みへと上昇させたと。

そして、その作品を踊ることでダンサーが成長し、その名演が観客を含めたバレエ界全体を成熟させるだけではなく、次世代に対しても、創作の出発点としての深い思案を促すところに、その影響力は多大であることを知って本当に嬉しくなった。

私への影響は、我が社が手造り故に、人間形成を知らずには従業員の指導は難しかった。その為、長年にわたり人間形成を、私達なりに研究開発、今の作業員たちの無駄を省く創意工夫の精神を育んできた。その間、昨年7月から松山バレエ団に通い、バレエの稽古を通しての人間形成の働きを客観的に触れ、多少でも掴み取り現場で応用した経験を思い出しつつ・・・ノイマイヤー氏の世界に心を寄せ理解を深めることに努め、喜びを味合った。